当社は、非線形有限要素法構造解析の技術系解析コンサルティング会社です。
下記の文献を参考にして、解析モデルを作成し、文献中のケース4に相当する条件で衝突解析を行った解析例を示します。
子細な条件は文献からだけでは読み取れない部分もあるため、適当に仮定してモデルの作成と解析条件を定義し、衝突解析を行いました。そのため文献と厳密に等価な比較を行うことは最初から目的とはしておりません。
鋼製角管の竜巻飛来物のガイドラインでは質量135kgの角管が衝突速度51m/sで対象構造物に衝突することが規定されていますが、これを実験的に行おうとすると、衝突直前の飛来物の運動エネルギーから考察すると、高さ約133mからの自由落下が必要になります。133mの高さに相当する高層建築物の一例としては、東京都港区赤坂にあるANAインターコンチネンタルホテル東京が該当します。このホテルの屋上から地上に質量135kgの角管を自由落下させることは、現在の技術においては非現実的であります。そのため135kgの飛来物を51m/sの衝突速度で衝突させる実験は諦めるしかありません。代わりに衝突直前の運動エネルギーを一致させることにして、飛来物の質量を大きくし、自由落下の高さを現実的に実験可能なレベルに引き下げた条件で、落下衝突実験を行い鋼板の貫通評価を検討したというのが参考文献の趣旨になるかと思います。
この実験は落下高さ15mで行っていますが、それでも相当大掛かりな実験です。すぐに何度も実験ができるようなわけにはいかないと思います。また大掛かりな実験なので測定も試行錯誤がついて回るわけですが、この実験の規模や性質上、一回やってうまくいかなかったからといって、すぐに2回目の実験ができるわけではないので、いざ実験をするにしてもプロジェクト関係者には相当なプレッシャーがあったはずです。それでも何かやってみないと結果は得られませんし、得られた結果から次の課題が浮かび上がってくるのが技術開発です。そのような苦労を読み取った上で、本論文および技術は評価されるべきだと考えます。この衝突実験も今から10年近く前に行われた実験ですから、今後はさらに洗練されたものに進化する可能性も十分あります。
本解析例では、飛来物は文献に倣って長さ800mm、板厚4.5mmのSS400製の角型鋼管とし、飛来物全体の質量は1300kgとしてあります。衝突速度は文献とエネルギー計算から約16.4m/sとし、初期運動エネルギーは 175.6kJとしました。角型鋼管部分の要素タイプは、完全積分タイプELFORM16のシェル要素でモデル化しました。
被衝突対象となる鋼板は厚み6mmのSUS304の平板としました。要素タイプは、完全積分タイプELFORM16のシェル要素でモデル化しました。
参考文献:北田 明夫, 角 大詩, 福本 智志, 西崎 信, 赤司 裕, 守屋 登康 :竜巻飛来物を模擬した角管の落下衝突による鋼板の貫通解析, 日本機械学会論文集, Vol83, No.851, 2017
なお,本事例はサンプルであることをご了承下さい。
Keywords: 衝突解析, 竜巻飛来物, 鋼板
Tools: LS-PrePost ver.4.8, LS-DYNA MPP Win64 R14.1
September 9, 2024 create a new entry
Fig.1 竜巻によって飛来する角型鋼管の衝突による鋼板の変形解析例(変形)
Fig.2 竜巻によって飛来する角型鋼管の衝突による鋼板の変形解析例(変形)
Fig.3 竜巻によって飛来する角型鋼管の衝突による鋼板の変形解析例(塑性ひずみ)
Fig.4 Time = 0 ms
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Fig.10 Time = 60 ms
Fig.11 Time = 100 ms
Fig.12 Time = 100 ms / 鋼板の相当塑性ひずみ分布図 架台フレーム半透明化
Fig.13 Time = 100 ms / 鋼板の相当塑性ひずみ分布図 鋼板のみ表示
Fig.14 エネルギーバランス
Fig.15 ひずみエネルギーの配分