当社は、非線形有限要素法構造解析の技術系解析コンサルティング会社です。
本解析は斜面防災や重要施設への竜巻飛来物等の防護工を手掛けておられる東亜グラウト工業株式会社様からのご依頼に基づき実施したものです。解析事例の公表は東亜グラウト工業株式会社様の許諾を得て行っています。
本シミュレーションは、鋼製円形リングであるリングネットのみで構成された高速飛来物バリアの平面形状が長方形(長辺6m、短辺5m)をしているケースを想定し、鋼製飛来物が衝突速度 63m/sで高速飛来物バリアに衝突した際の挙動をLS-DYNAを用いて予測シミュレーションした事例です。
本解析モデルの前身は、1辺が4mの正方形システムでしたが、その解析モデルでは、複数の実証実験に先行した衝突解析で高精度に実験結果を予測することができた実績にもとづき、長方形断面のネットシステムの挙動を研究するために解析を行いました。
モデルの特徴は、柔構造物であるリングネットのシングル、ダブル配置を表現し、ネットやロープの弾塑性変形挙動及び破断挙動、ネットどうしのすべての接触とすべり摩擦挙動、フレームドロープにネットシステムを懸架するためのシャックルの滑り摩擦挙動を考慮したカーテンレールを表現してあり、高速飛来物衝突時のネットシステムの柔構造変形挙動を模擬することができます。また、フレームドロープに組み込まれたブレーキリングシステムの挙動を表現しており、衝突時に飛来物が有している高い運動エネルギーを、弾塑性変形によりエネルギー吸収する動作を考慮してあります。
ユーザーがLS-DYNAの持っている能力を最大限に引き出すことができれば、大規模で複雑な柔構造システムの衝突解析評価においてLS-DYNAがフロントローディングで高い能力を発揮できることを示す実例と考えていただければと思います。
なお、リングネットやテコネットの高速飛来物の阻止能力は驚異的に高いのですが、高速飛来物バリアの設計及び施工について豊富な経験を有しておられる東亜グラウト工業様が個別の防護目的に対してより合理的なエネルギー吸収構造設計を行うことによって、ネットシステム全体で高速度飛来物の捕捉能力がさらに向上している点を付記します。本プロジェクトを通じて、やはりその道のプロの専門家が実物実験と数値シミュレーションに基づいて設計すると性能や品質が違うのだと実感した次第です。
Keywords: Dynamic impact simulation, Crash simulation
Tool: Hyper Mesh v.13, LS-PrePost ver.4.3, LS-DYNA SMP and MPP Single Precision Win64
Nov-8-2016
Fig.1 衝突前 Before Crash (Impact velocity 63m/s)
Fig.2 衝突後 After Crash
Fig.3 衝突前 Before Crash
Fig.4 衝突中 Crash
Fig.5 最大たわみ maximum deflection
Fig.6 Crash Simulation
Fig.7 Crash Simulation