LS-DYNA で使用する単位 No.01 構造解析編

LS-DYNAをはじめ多くの本格的な解析ソフトウェアでは,単位系を持っていません.そのため,単位系はユーザーが入力データ上で整合性を取って入力することで定義します.構造解析では一般的に次の表に示す単位の組み合わせがよく用いられます.

 例えば,長さの単位を [mm] とすると,質量を [tonne],時間を [sec] とすることで,力(荷重)が [N] ,応力が [MPa] となります.
 機械部品や設計では図面寸法は [mm] で表現されることが一般的ですので,長さが最初に決まっているケースが多くなります.これは作業現場の都合によるものです.次に解析結果や入力しなくてはならない材料の物性データなどの考えやすさから,力と応力の単位系を考えます.機械系の構造解析では,力の単位を [N]に,応力の単位を [MPa] としたいと考えます.すると表より,質量と時間は [tonne] と [sec] にすればよいことがわかります.
 以上のように単位系は解析者の考えやすい都合に合わせて決めることができます.他分野との連成解析などを行う場合は,SI単位系の(kg - m - s) を使用した単位を使用することで,データ作成の手間や単位変換ミスのリスクを軽減できるでしょう.
 設計者向けCAEソフトウェアなどでは,ソフトウェアがあらかじめ単位系を持っているものが多くあります.この場合は,上記の代表的な単位系を持っていることが一般的ですが,ユーザーが組み合わせを変えることもできるようになっているのが普通です.
なお、土木工学のエンジニアリングの分野では,力や荷重のことを応力と呼称し,応力のことを応力度と呼称する文献や資料が多数あります。これは古くからの土木工学の世界での慣例のようなものですが、一種の方言であるとも言えます.しかしながら,CAEソフトウェアを使う場合に,荷重のことを応力と呼称したり,応力のことを応力度と呼称することは受け手の誤解を招いてトラブルの原因となりえます。そのためどうしても荷重を応力と表現したり,応力のことを応力度と表現したい場合は,必ず単位を併記して誤解を避ける努力をすべきでしょう.説明を聞いた側の人間が複数の解釈ができてしまうような説明は最初から避けるべきです.

次に上記の単位系の整合性を手計算で確認してみましょう.
 出発点は,長さ [mm] とします.このとき,力を [N] の単位で表すためには,質量と時間の単位をどうするかを求めるわけです.下のオーダー変換より,長さを [mm] とした場合,力を [N] で表示したければ,質量を [tonne] ,時間を [sec] とすればよいことがわかります.逆に,長さを [mm] ,質量を [tonne] ,時間を [sec] とすれば,力は[N] になることがわかります.

力が上記の単位で表されるとき,応力の単位はどうなるでしょうか?
 下記より [MPa] になることがわかります.

単位系を間違ってしまうと解析がすべてパーになってしまうので要注意です.特にメッシュをどの長さで作ったかということと,プリプロセッサを通して出力した際にオーダー変換などをミスしてしまっていないかなど作業は慎重に確実にが基本です.